詩を読むような僕の独り学

近畿大学の図書館司書課程の学習記録ほか

5706 情報サービス論 レポート

【設題】利用教育(利用指導)の重要性を挙げ、それぞれについて簡潔に述べるとともに、実施のために必要な環境整備とは何かを考察し、論ぜよ。
【字数指定 2000字(増減100字以内)】

 1.利用教育とは
 「図書館利用教育」とは、『図書館利用教育ガイドライン』において「すべての利用者が自立して図書館を含む情報環境を効果的・効率的に活用できるようにするために、体系的・組織的に行われる教育」[1]と定義されている。また、『図書館情報学用語辞典』には「図書館の利用者および潜在的利用者の集団を対象に計画、実施される、組織的な教育的活動」[2]と定義されている。

2.利用教育の重要性と、必要とされる背景
 現代は情報化社会であり、膨大な情報が日々扱われているとともに、人々が求める知識も多様なものになっている。こうした状況のなかで、情報が正しいかどうか、有用かどうかを判断する「情報の選択能力」を身につけることと、情報入手のための調査法を学ぶことが必要不可欠なものになった。
 しかしながら、日本国内の小・中・高校の教育において、文献調査法を教える体制が整備できておらず、これを知らない学生が大多数という現状がある。そのため、大学教育のなかで文献調査法が次第にカリキュラム化されたり、図書館独自に指導を行ったりすることが増えてきているが、本来は高校までに十分指導し、効率的な調べものができるよう教育がされているべきである。大学図書館の利用教育では、新入生などを対象に、オリエンテーションを行ったり、図書館ツアーで館内を案内しながら各サービスを紹介したり、文献探索法やコンピュータリテラシーに関する教育を実施したりする。
利用教育は、単に学生のレポートや卒論の作成に必要なだけではない。『図書館利用教育ハンドブック‐大学図書館版』によると、資料を探索する過程そのものを学ぶことは、「情報を探すにはどのような手順、ツールがあるか」という普遍的に必要とされる概念を理解することであるとされる。そのため、様々なことに応用がきくのだと説明されている。[3]
 利用教育は、情報化社会を生き抜くために必要不可欠な能力であるとともに、生涯学習という社会教育を支える点でも重要である。そのため、図書館学授業や教員、大学図書館員によって展開されるのみでなく、公共図書館なども含めて社会的・国家的に実施し、すべての人が文献調査法を活用できるよう利用教育を充実させる必要がある。 

3.利用教育実施のために必要な環境整備
 図書館利用教育を実施するにあたっては、職員が個人的に活動するのではなく、環境を整備したうえで行う方が効果的で、将来的な発展も期待できる。大学図書館を中心に、必要な環境整備を以下に述べる。
(1)組織的な実施
 利用教育が継続的かつ均質なサービスとなるよう、図書館業務として組織的・制度的に整備する必要がある。職員による個人差や人事異動があってもサービスが変化しないよう、事務分掌規程や実施マニュアルに定め、館内研修などを行い、業務を標準化するのが望ましい。組織内での責任も明確にしておくことで、健全な発展に繋がる。
(2)予算措置
 組織的な活動を継続するには、予算措置が必要である。教材費や広報費など、利用教育を効果的に実施するためには費用がかかり、組織でなければ資金確保は難しい。また、最近の学生たちが親しみやすいよう映像メディアを利用した教育も効果があるが、周辺機器の購入には多額な予算を伴うので、計画的な準備を要する。
(3)教員との連携
 利用教育は、図書館利用を上手に行うことをもって教育効果を高めるという、教育支援である。そのため、教員と連携し、共通認識のもとで協力して効果的に行う環境を整えるのが望ましい。
(4)レファレンスツールの充実
 情報源の探索には、レファレンスツールを充実させることが必要である。これらが整備されていなければ、利用教育を受けても、探すための道具が不十分では教育効果をあげられない。しかしながら、予算規模の小さな図書館ではすべての資料を揃えることは困難である。こうした場合は、相互協力が可能なことや、近隣の図書館などへ照会をしたうえで、これらのサービスが利用できることを利用者へ情報提供することが重要である。 

4.今後の課題
 『図書館利用教育ハンドブック‐大学図書館版』によると、利用教育の重要性が高まったことについて、「図書館が情報を手にする唯一あるいは中核となる機関ではない場合があることの宣言でもある」[4]と述べている。
 情報やサービスが氾濫する現代では、図書館を利用しなくとも、好きな時に情報を検索し、知ることが可能となった。こういった状況のなかで図書館の利用価値を高めるには、例えばオンラインデータベースなどの電子媒体ツールといった新しい便利なサービスについて、積極的な利用教育によってPRしていく必要がある。図書館が将来にわたって人の学びを支援する存在であるためには、利用教育によって、利用者の自立した図書館利用を促進させるとともに、図書館自らが先進技術の効果的な活用を学び、実践していくことが重要だと考える。

引用文献
[1]図書館利用教育委員会(2001) 『図書館利用教育ガイドライン合冊版』日本図書館協会
[2]日本図書館情報学会用語辞典編集委員会(2013)『図書館情報学用語辞典 第4版』丸善出版, p.183
[3] 日本図書館協会図書館利用教育委員会(2003)『図書館利用教育ハンドブック‐大学図書館版』日本図書館協会, pp.12-13
[4]日本図書館協会図書館利用教育委員会(2003)『図書館利用教育ハンドブック‐大学図書館版』日本図書館協会, p.13 

参考文献
日本図書館協会図書館利用教育委員会(2003)『図書館利用教育ハンドブック‐大学図書館版』日本図書館協会
小田光宏(1998)『情報サービス概説』日本図書館協会
大高利夫(2006)『レファレンスツール活用マニュアル』日外アソシエーツ

◇◇◇


「大変良いレポートです。纏め方、参考文献、引用文の活用とも高く評価できます。」との講評をいただけました。嬉しい。
テキストもわかりやすく、私自身も「利用教育とはなんぞや?」という図書館初心者なので、面白かったです。
提出から10日ほどで返却されました。

※掲載するレポートや解答例は、個人的な記録として参考までに公開するものであり、これらを模倣して試験に落ちた場合も責任は負えません。また、いわゆるコピペレポートは禁止されておりますので、書き写しはご遠慮ください。

 

近代司書進捗(メディア授業申し込み)

昨日、「情報サービス論」のレポートを提出し、さきほど「情報サービス演習」のメディア授業を申し込みました。

近畿大学の司書コースは、スクーリングかメディア授業となる科目が2つあるのですが、後期の申請機関が10/1~10/15と結構短く、これを逃すと半年以上待たねばならないので、申請条件であるレポート提出を急いで済ませました。

これから試験等でどれだけ忙しくなるか予想できないので、「情報資源組織演習」は、ひとまず来年の前期にまわしたいと思います。

5701 生涯学習概論 レポート

【設題】ポール・ラングランの生涯教育理論が我が国の施策に及ぼした影響について述べてください。
【字数指定 2000字(増減100字以内)】

1 はじめに
 生涯教育の考え方が世界的に議論の対象となったのは、1965年12月のユネスコ第3回成人教育推進国際委員会でポール・ラングランが発表した『生涯教育について』が契機であった。
 日本においても、ラングランの理念が紹介されたのを皮切りに、各種審議会の答申を重ね、生涯学習推進のための体制づくりが行われた。
 本レポートでは、この過程を中心に論じる。

2 ポール・ラングランの生涯教育理論
 ラングランは1960年に発表した『生涯教育について』において、生涯教育の意義は「教育の年齢及び教育方法・内容などの統一・綜合」にあると述べた。教育は幼児期の家庭教育や青少年期の学校教育等で停止するのではなく、「個人の生涯にわたる教育機会と、社会の教育機会を統合する」[1]のが重要ということである。
 ラングランは、生涯教育が必要な理由を「激しい社会の変化」への対応策だと述べている。この理論が発表された1960年代は、技術革新、情報化社会への移行といった変動の中にあった。人類は社会の変化に柔軟に適応できる「新たな能力」を獲得しなければならず、また、これを得るために従来の教育制度に変わる新しい制度が必要とされた。こうした背景があり、生涯にわたり学習を継続する「生涯教育」が考え出された。
 ラングランの提起した「生涯教育」は世界的に注目されたが、一方で、特に発展途上国は学校教育や識字教育が先決問題の時代であったため、彼の考え方はヨーロッパ(先進国)中心の傾向であり、余りにも高い理念だという批判を受けた。
 そこで、これを補完・具体化させる提案として、OECD(経済協力開発機構)のリカレント教育や、ユネスコのジェルピの生涯教育論が後に発表された。

3 ポール・ラングランの生涯教育理論が我が国の施策に及ぼした影響
 日本では、前述のユネスコ第3回成人教育推進国際委員会(1965年)に出席した波多野完治が、1967年に、ラングランの理論を翻訳して「生涯教育」の考え方を紹介したことが、教育改革の議論の始まりとなった。
 当時の日本は、高度経済成長政策により産業構造が変化し、必要とされる知識や技能も進化していた。それに伴い公害等の問題が深刻化しており、個人レベルの努力ではこれらに対応しきれなくなっていた。
 こうした背景があり、国民生活審議会は1970年に『成長発展する経済社会のもとで、健全な国民生活を確保する方策に関する答申』を発表した。その中で、変化に対する方策として、能力の開発、向上の場の確保を挙げるとともに、それを実現する制度の整備は企業や政府双方の課題であるとし、経済と教育の関係を述べている。日本では、社会問題への対応策として生涯教育が受け入れられ始めたが、特に産業界を中心に反応をあらわしたことが特徴的であった。
 1971年には、中央教育審議会及び社会教育審議会が、生涯教育に関する答申をそれぞれ発表する。二つの答申の共通点としては、従来の学校教育中心の教育制度を反省し、社会構造の変化に対応するためには、家庭教育及び学校教育を充実させ、そこに社会教育を含めた三つの教育の有機的統合が重要だと述べたこと、さらに、生涯教育理念導入の必要性を強調したことが挙げられる。
 しかし、当時は、不安定な社会情勢や教育政策をめぐる対立構造もあり、生涯教育施策の具体的議論には至らなかった。
 生涯教育が実現に向け検討され始めるのは、1981年の中央教育審議会の答申『生涯教育について』においてである。この中で「生涯学習」は「各人が自発的意思に基づき、生涯を通じて行う学習」と定義され、それを支援する教育機能を整備・充実させることが生涯教育の理念であるとされた。
 人の一生に関わる生涯教育は、文部大臣の所轄ばかりでなく、広い分野で検討される必要がある。そこで、内閣総理大臣の諮問機関として、1984年から1987年まで臨時教育審議会が設置され、教育改革をテーマに第一次から第四次答申までを行った。その特徴は、「生涯学習体系への移行」を提案した点にある。また、1986年の第二次答申に「生涯学習」の考え方が大きく取り上げられた。
臨時教育審議会の提言した、生涯学習体制の整備としての「家庭・学校・社会の諸機能の活性化と連携」[2]を実現するため、政府は1987年に教育改革推進大綱を決定した。1988年には機構改革を行い、文部省に生涯学習局が発足する。これにより、全国的に生涯学習行政が推進された。
 1990年1月、中央教育審議会が『生涯学習の基礎整備について』を発表した。この答申を受け、同7月、生涯学習振興法が施行された。この中では、生涯学習振興のための都道府県の事業、地域の生涯学習振興基本構想の実施、生涯学習審議会の設置について定められた。

4 まとめ
 現代では社会の変化は加速しており、個人や社会の多様な要求に応えるものとして、ますます生涯教育が必要となっている。生涯教育は、従来の教育の在り方を批判する考えから成り立った。これからもこの精神を忘れず、将来的な変化も予測して教育制度全体を充実させることは勿論、学習者自身が各自の学びに対する問題提起をし続けることが重要だと考える。


引用文献
[1] 坂井 暉(2012)『生涯学習概論』近畿大学情報教育部, P.11
[2] 坂井 暉(2012)『生涯学習概論』近畿大学情報教育部, P.31

参考文献
坂井 暉(2012)『生涯学習概論』近畿大学情報教育部

◇◇◇


webで提出してすぐに返却されました。ありがたいです。
どの科目から学習するかに決まりはありませんが、個人的には一発目をこれにしたおかげで早々に挫折しそうになりました…。
テキストはわかりやすく書かれていて、終わってみればそんなに難しいことはなかったのですが、言葉くらいしか知らなかった「生涯学習」の概念についていきなり掘り下げねばならないのがしんどかったです。知識があれば問題ないと思いますが、私のような本当の初心者は、とっつきやすい図書館概論あたりから始めた方がいいのかもしれません。

※掲載するレポートや解答例は、個人的な記録として参考までに公開するものであり、これらを模倣して試験に落ちた場合も責任は負えません。また、いわゆるコピペレポートは禁止されておりますので、書き写しはご遠慮ください。

近畿大学通信教育司書課程(2016年10月入学)の勉強記録

本ブログでは、近畿大学の図書館司書課程の勉強の記録を掲載していきます。

◇学習期間
1年間での司書資格取得を目標に、2016年10月から学習を開始。
2017年5月に受講終了しました。

◇進捗状況

      レポート
提出
レポート
返却
試験合格
基礎科目 5701 生涯学習概論 10/1 10/3 12/6
5702 図書館概論 12/15 12/16 2/5
5703 図書館情報技術論 ①10/1×
②10/26
10/21×
11/13
12/6
5704 図書館制度・経営論 10/14 10/27 12/6
図書館サービスに関する科目 5705 図書館サービス概論 12/30 1/8 2/5
5706 情報サービス論 10/6 10/17 12/6
5707 児童サービス論 ①11/9×
②11/16×
③11/27
11/11×
11/18×
11/28 
1/17
5708◎ 情報サービス演習 - 1/31
図書館情報資源に関する科目 5709 図書館情報資源概論 10/25 11/14 1/17
5710 情報資源組織論 2/13 3/6 3/12
5711◎ 情報資源組織演習 - 5/8
選択2科目 5801 図書・図書館史 12/11 12/12 2/7
5804 図書館情報資源特論 11/30 12/21 2/7

◎→メディア授業またはスクーリング。


掲載するレポートや解答例は、個人的な記録として参考までに公開するものであり、これらを模倣して試験に落ちた場合も責任は負えません。また、いわゆるコピペレポートは禁止されておりますので、書き写しはご遠慮ください。