詩を読むような僕の独り学

近畿大学の図書館司書課程の学習記録ほか

5801 図書・図書館史 レポート

【設題】日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代・中世・近世・近代以降)の図書館発展の特徴を骨太に要約し、かつ私見(400字以内)を述べてください。
【字数指定 2000字】(増減100字以内)

西洋における図書館発展について述べる。
1.古代
世界最古の図書館は、メソポタミアのアッシュール・バニパル王(BC668~626)の図書館とされている。王が収集したのは楔形文字で描かれた粘土板で、宗教、歴史、科学、文学などあらゆる分野にわたっており、学者には公開されていた。
BC300年頃にはエジプトのプトレマイオス一世がアレクサンドリア図書館を創設し、学術文化の中心地として、膨大なパピルスの巻軸図書を収集した。この図書館には写本の専門職員がおり、彼等の生産した写本は図書館に納められると同時に市販もされ、図書館と出版局機能が一体化していたという特徴がある。また、ピナケスという総合目録を作成しており、この時代に利用のメカニズムが存在していたことは注目される。
アレクサンドリア図書館と並び称されたペルガモンの図書館では、パーチメント(羊皮紙)を書写材料としていた。羊皮紙は、ペルガモンへのパピルス紙の輸出が禁止されたために考案されたものだが、冊子形式をとることが出来たため、一般的に流布するようになった。

2.中世
この時代では、キリスト教会や修道院が教育や文化の担い手となり、後世への橋渡しを果たす。修道院図書館は、6世紀までにかけてヨーロッパ各地に建てられた修道院にキリスト教関係の文献が集められてきたことで形成された。中世の修道院は、当時唯一の教育機関であり、学ぶ人の多くは修道士であったが、次第に一般世人にも開放されたことで人々の学問への意欲が高まり、12世紀の大学発生の要因ともなった。
図書館の公開制への動きは15世紀頃から見られた。それは公開用と保存用に分かれ、公開用は一部の知識階級に限られていたものの、幽閉的な修道院図書館からの脱却の現れという意義をもつ。なお、活版印刷の普及までは書写による羊皮紙の図書生産が一般的で、本は依然として貴重だったため、聖書関係や参考図書などは鎖付き本として管理された。貸出は、特定の人や保証金を積むなど厳格な条件のもとで行われた。

3.近世
1450年頃にグーテンベルクが発明した活版印刷と紙の普及によって、図書が大量かつ安価に生産され広範囲の人に行き渡り、教育の普及が促進された。写本から刊本への移行のなか、図書館のあり方は大きく変わり、図書の保管方法も変化する。図書の量的な拡大により、書架に並べられるようになり、公開制や貸出が促進され、近代図書館の姿が芽生えたのである。
活版印刷術の発明は、聖書や改革運動を推進したルターの論文等を急速に広め、宗教改革を成立させる一因ともなった。宗教改革では多くの図書館が破壊や略奪の被害を受けたが、差し押さえられた修道院図書館は市立図書館や大学図書館に発展し、新教の布教を狙いとした大衆向きの教会図書館も出現した。

4.近代以降
1789年のフランス大革命で古い制度が打ち壊されるなか、図書館においても、特権階級に限られた文献を広く一般に公開しようという政策がとられた。教会、貴族や修道院等の図書館を没収し、国家の財産として国民にその利用が委ねられたのである。王室図書館はフランス国立図書館と改称され、公共性に対する認識が深まるとともに新しい市立図書館が次々設立された。
無料制の学校が開かれ教育が普及したことが、社会教育機関の一つとしての図書館に影響を与え、無料の公共図書館の発展も見られた。イギリスやアメリカでは、法的な根拠のもとで公費によって運営が行えるよう図書館法が制定された。

現代はコンピュータの登場により情報化社会となり、図書館間の協力が国際規模まで進み、文献は膨大になり、情報の電子化が進んだ。
この中で、図書館における資料の保存と活用の手法にも変化が見られた。図書館の資料収容能力には限界があるため、別置したり廃棄したりする必要があるが、最近では紙の本を電子化するというメディアの転換が可能になった。さらに、複数の図書館が図書を共同で保管し、資料と書庫の経済的活用と図書の再利用を図るデポジット・ライブラリーという構想が生まれた。また、複数図書館の共同分担によって総合目録を形成する書誌ユーティリティにより、各館での目録作業が軽減され、相互貸借による活用が促進された。

5.私見
現代では当たり前となった紙の冊子も、パピルス、羊皮紙などの変遷を経て普及し、現代では電子書籍という新たなメディアも一般化しつつある。図書や図書館のあり方は今後も進化し続けるだろう。一方、長い歴史の中で図書館も興亡を繰り返してきたが、利用者は制限されることが多く、公共のものとして公開されたのはごく最近のことである。しかし古代から人は粘土板に文字を刻み、一冊ずつ写本して保存するとともに、その共有を目指してきたことから、知識への熱意は不変であったことが読み取れる。図書館の発展は、図書を大衆が獲得した歴史とともにあり、そして図書館が人々にもたらした知識によって、現代社会の発展が支えられている。図書館が人の進歩に果たした役割は大きいと感じた。

参考文献
小黒浩司(2013)『図書・図書館史(JLA図書館情報学テキストシリーズ3-11)』日本図書館協会

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私は高校では日本史未履修、理系コースだったので世界史も独学、という…歴史にめっぽう弱いのですが、一度目で合格いただけて嬉しかったです。
「アメリカの発展史をさらに追及して、図書館の役割とは何か、公共性の系譜を考察してみよう」というコメント(確かにかなり省いてしまった)と、あたたかい応援のメッセージをいただけて、ほっこりしました。
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