詩を読むような僕の独り学

近畿大学の図書館司書課程の学習記録ほか

5704 図書館制度・経営論 レポート

【設題】図書館の専門職が行うべき業務にはどのようなものがあるかを挙げ、それぞれ述べるとともに「これからの図書館像」(報告)を考察し、専門職としての司書のあるべき姿を論ぜよ。
【字数指定 2000字】(増減100字以内)


1. 図書館の専門職
専門職とは、裁判官、医者に代表されるように、国家資格試験にて社会的に認知されるようなものである。図書館の専門的職員は、通常司書資格を有するものを言うが、単に資格をもっていることのみでは専門職とは言い難い。司書は、レファレンス業務で質問に対する調査方法を指導する教育的機能や、主題知識を生かして利用者に必要な良書を選定する能力を有することなどをもって、その専門職性を認めることができる。そのようになるためには、司書資格に加えて、主題知識や書誌・図書館学知識など幅広い教養とキャリアをもち、指導能力を身につけることが求められる。
大学図書館で専門職が行う業務の例には、次のようなものがある。
①レファレンス業務
 司書職としての代表的な専門職業務である。利用者の質問の主題・専門性を理解した適切な処理、書誌の適切な提供や指導には、専門知識が必要。
②選定業務
 利用者のニーズに沿った適切な資料を収集しなければならない。これには、高度な主題知識や深い教養を有し、判断する力が必要。
③分類・目録業務
 適切な分類作業や、目録作業における件名付与作業には、主題知識や書誌学知識と高い専門性が求められる。
④情報調査業務
 コンピュータを活用し、データベース等から適切に情報を探索するには、レファレンスツール全体の専門知識が必要。
⑤文献探索指導業務、視聴覚資料利用指導業務、コンピュータ操作指導業務
 書誌等のレファレンスツール知識、視聴覚資料知識、周辺機器操作の知識などを有したうえで、利用者へ適切な指導をする力が必要。
 なお、公共図書館の司書職では、児童サービスや障害者サービスの担当者、行政資料や郷土資料などの特殊分野のレファレンス担当者などが、専門的職員として挙げられる。

2. これからの図書館像
 2006 年4月、「これからの図書館の在り方検討協力者会議」が発表した『これからの図書館像-地域を支える情報拠点をめざして-(報告)』は、社会の変化や新たな課題等に対応して、これからの図書館運営に必要な方策等について論じたものである。報告書では、現代の日本は、少子高齢化や財政困難、急速な技術革新等による課題や変化に直面しているとしたうえで、これらの課題解決のために様々な新しい知識や情報を学習し続けることが必要となっていると述べる。このような状況の中で、「必要な知識や情報が適切に入手できるような環境の整備が不可欠である」[1]とし、その役割を担うのが図書館であるとしている。
 一方で、近年は厳しい財政状況にあり、司書・司書補の専任職員数は減少し、資料購入費も削減される傾向にある。これからの図書館は、単に本を貸出すのみでなく、社会に向けて、情報センター的機能や、地域振興の拠点・社会教育施設という新たな図書館活動の意義の理解促進を図る必要がある。報告書では、図書館は、「出版物に発表された正確で体系的な知識や情報を提供するとともに、インターネット上の多様な情報源の利用の機会を提供することができる」と所有資料の意義を述べ、さらに、図書館はこれらのあらゆる情報を一箇所で提供しうる「『ワンストップサービス』機関」[2]であり、これを利用するための情報リテラシーを育成する場であると提言する。
従来の「本を貸出すところ」というイメージを払拭し、このような新たな役割を実現して社会へ広めていくためには、図書館職員の能力向上が必要である。とくに、専門職としての司書のあり方は、利用者の図書館サービスに対する印象に直結するため、重要な要素であると考える。

3.あるべき司書の姿
 上記のような役割を図書館が果たすためには、レファレンスサービス、課題解決・調査研究の援助、専門的資料の提供などを充実させる必要があるが、これには司書の育成が不可欠である。報告書では、司書は専門的な知識に加え、「地域社会の課題やニーズを把握する能力、情報技術、図書館経営能力など、改革の進んだ図書館で必要となる能力」[3]を身に付けることが必要としている。まさにこういった点においてこそ、司書の力が発揮されるべきだと考える。資料や情報をそのまま提供するだけでなく、利用者が活用できるように配慮し、また次回からは利用者自身が自立した利用ができるよう指導するなど、ひとつの質問に対する答えにも付加価値を付けることが、司書の目指すべき姿である。そのためには、知識を蓄積するという日々の努力を怠らず、スペシャリストとして利用者と接し、提供するサービスの質をもって図書館の価値を高めるよう能力を磨き続けることが重要だと考える。

引用文献
これからの図書館の在り方検討協力者会議(2006.3)『これからの図書館像-地域を支える情報拠点をめざして-(報告)』文部科学省(最終アクセス2016年10月12日)
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286184/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06032701.htm
[1]「1.公立図書館をめぐる状況」
[2]「2.これからの図書館サービスに求められる新たな視点」
[3]「3.これからの図書館経営に必要な視点」

参考文献
日本図書館協会図書館運営に関する基本問題検討委員会(1996)『図書館運営のあり方を考える-ゆたかな暮らしをつくる図書館-シンポジウムの記録』日本図書館協会
大串夏身(2002)『これからの図書館 21世紀・知識創造の基盤組織』青弓社

 

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「とても良いレポートです。纏め方、参考文献、引用文の活用も高く評価できます。」と講評いただきました。
これからの図書館像』に書かれていることは、「こうしたらよくなりそうなのにな~」とぼんやり思っていることがわかりやすく文にされており、とても勉強になりました。
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